『BARRY GUY. LONDON JAZZ COMPOSERS ORCHESTRA Radio Rondo IRENE SCHWEIZER Schaffhausen Concert 』

Intakt CD 158

Barry Guy(director, b) Ire`ne Schweizer(p) Evan Parker(reeds) Mats Gustafsson(reeds), Trevor Watts(reeds) Simon Picard(reeds) Pete McPhail(reeds) Conrad Bauer(tb), Johannes Bauer(tb) Alan Tomlinson(tb) Henry Lowther(tp) Herb Robertson(tp) Rich Laughlin(tp) Per A°ke Holmlander(tuba) Phil Wachsmann(vln) Barre Phillips(b) Paul Lytton(per) Lucas Niggli(per)

1. Schaffhausen Concert (Ire`ne Shweizer)
Ire`ne Schweizer: Piano Solo

2. Radio Rondo (Barry Guy)
London Jazz Composers Orchestra

Recorded Mai, 21, 2008 at Schaffhauser Jazzfestival, Switzerland

ロンドン・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ (LJCO) は、バリー・ガイが70年代初頭に結成したビッグバンド。当時の若いミュージシャンは自主組織「ミュージシャンズ・コープ」を立ち上げ、日曜日の夜にコン サートを行っていた。そのひとりだったガイは、皆を集めてビッグバンドをつくることを思い立った。1972年のバッハ・フェスティヴァルでのライヴが最初 の作品『オード』(Incus→Intakt)である。一時期アカデミックな方向にも向かったが、80年代半ば以降は作品と即興を構造的に融合させること を追求しながら、断続的に演奏活動を続けていた。
私がLJCOを観たのは1998年のベルリンジャズ祭。それが最大のお目当てで、LJCOを観たくて出かけたようなものだった。演奏されたのは、LJCO の名作<ハーモス>、マリリン・クリスペルをゲストに迎えたピアノ・コンチェルト、マギー・ニコルスとガイのコンダクションが撚り合わされる<ストレン ジ・ループス>、いずれも印象に残る好演だったのだが、ベルリンジャズ祭を最後に長い休眠期間に入ってしまった。それには個人でビッグバンドを続けること に経済的な難しさがあったのだろう。

それから約10年、2008年のシャフハウゼンのジャズ祭にLJCOが出演するという情報を得た。それは嬉しい驚きだった。そして、ライヴ録音が出ることをずっと待っていたのである。
シャフハウゼンのジャズ祭では、往年の名曲<ハーモス>とイレーネ・シュヴァイツァーとLJCOのための書き下ろし作品<ラジオ・ロンド>が演奏された。 CDに収録されているのはトラック2の<ラジオ・ロンド>のみ。トラック1のピアノ・ソロはLJCOの作品とは別プログラムでシュヴァイツァーが同ジャズ 祭で演奏した時のライヴ録音。
シュヴァイツァーとLJCOは以前にも共演しており、CD『Teoria』(Intakt)もリリースされている。ピアノ・コンチェルトとしてしっかり書 かれた前作に比べ、<ラジオ・ロンド>ではシュヴァイツァーというピアニストの良さを生かすためによりフレキシブルなものにしたとライナーノートにあると おり、ここでのシュヴァイツァーは持ち味のパーカッシヴなプレイを駆使し、実に生き生きと演奏している。アンサンブルとピアノをフィーチュアしながら作品 は展開していく。アブストラクト、あるいは点描的な演奏あり、サイモン・ピカードの抒情的なソロあり。激情と冷徹さが共存したこれほど強度のある演奏は久 しぶりに聞く。作品の構成力と自由度、インプロヴィゼーションにおけるバリエーションの豊かさ、集団即興演奏の凄み、LJCOは現代ヨーロッパのビッグバ ンドにおける最高峰のひとつとして甦った。今再びどこかでLJCOの演奏を観たいと切に思う。JT

(横井一江)

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